エントリークラスのCPU「Ryzen 3 3100」でオーバークロックをしてみる。
Ryzen 3 3100の動作確認をしていたらCPU温度が低いことに気づいた。当たりCPUっぽい挙動を見せられたら我慢できるジサカーは少ないだろう。予備で購入したCPUだしオーバークロックをする気は全く無かったのだが、少し試してみることにした。
オーバークロックについて
※オーバークロックはメーカーや代理店の動作保証対象外になるので自己責任で行うこと。
まずは、どのようにオーバークロックするのか決める必要がある。最初に決めるのはコアの倍率であるが、全てのコアの倍率を同じにする方法がオーソドックスでありオーバークロックの基本である。今回は、全てのコアの倍率を同じにする方法で行う。
次に、コア電圧のモードであるが、これも何通りかある。メーカーによって各モードの呼び名は異なるのだが、今回はmsiマザーボードのUEFIを参考に説明してみる。
- Override Mode:コア電圧を常に一定にするモードで、UEFIで初期設定されているモードである。所謂、固定モードである。
- Adaptive Mode:コアクロックの状態により電圧が変動するモード。低負荷(クロックが低い)では電圧が下がり、高負荷(クロックが高い)では電圧が上がる。定格動作の自動だとこれと同じ状態になる。
- Offset Mode:既定値の状態からプラスもしくはマイナスのオフセット電圧を加えるモード。主に電圧を下げる目的で使用されることの多いモードであるが、電圧を下げると低負荷時やアイドル時に不安定になる。
- Override+Offset Mode:Override ModeとOffset Modeを合わせたものである。
- Adaptive+Offset Mode:Adaptive ModeとOffset Modeを合わせたものである。
基本的にオーバークロックは「Override Mode」が推奨されている。今回は、Override Modeに設定する。
第2世代以降のRYZENは「Precision Boost Overdrive(PBO)」という機能があり、冷却に余裕がある場合はオーバークロックが自動で働くようになっている。コアクロックを固定にする場合はUEFIでこの機能を無効にしておく。管理人の環境だと自動でも有効でも特に問題なく動作するのだが、念の為。
「Load-Line Calibration(LLC)」は安定性を重視するなら高めの設定で構わないが、管理人はマザーボード任せの自動にしている。補正が強いと発熱が多くなるので、冷却に余裕がない場合は低めの設定にしておくと良い。というより、冷却に余裕がないなら素直にコア電圧下げるかコアクロックを下げよう。
今回はコア電圧を固定にするので、省電力機能である「Global C-state Control」、ブースト機能である「Core Performance Boost」はそれぞれ無効にしておく。最近のマザーボードは頭がいいので両方自動のままでも特に問題なく動作するが、不安定になるようであれば無効にしておく方が良い。
下記の記事で画像付きで解説しているので、設定方法を見たい人はこちらを参考にして頂ければ幸いだ。
また、オーバークロックが良く分からないという初心者向けに下記の記事で詳しく解説しているので、興味のある人は是非読んで頂きたい。
オーバークロックしてみる
以下の表は、今回の検証で使用するパソコンの構成。クーラーは空冷最強の「NH-U12A」を使用するが、冷却性能が明らかにオーバースペックなので、ファンの回転数は800rpmで固定。グリスはいつもの「シミオシ OC Master SMZ-01R」ネコグリスを塗布してある。室温は22℃。検証方法は、ベンチマークソフトの「Cinebench R20」を5回程度連続で実行してみて、エラーが出なければOKとする。現在は「Cinebench R23」がリリースされているが、Ryzen 3 3100が発売したときはCinebench R20が主流だったので、比較しやすいようにR20を使用する。※画像はCPUクーラーにファンがひとつしか付いていないが、検証はふたつ付けて行った。まぁひとつでも温度は殆ど変わらんのだが。
パソコン構成 | |
CPU | AMD Ryzen 3 3100 |
CPUクーラー | Noctua NH-U12A |
メモリ | G.Skill TridentZ Neo F4-3600C16D-32GTZNC(速度3600CL16) |
マザーボード | MSI MEG X570 UNIFY |
電源ユニット | Seasonic PRIME Titanium 1000W |
まずは、コア電圧を1.200Vで固定し、コア倍率を42から上げていく方法で検証してみる。LLCに関しては、マザーボード任せの自動にしてある。
全コア4.4GHzで問題なく動作した。すっごーい!
流石に1.200Vで全コア4.5GHzは無理かも知れないので、コア電圧を1.250Vに上げてみる。
駄目かと思ったが普通に回ってしまった。しかもかなり安定している。ここまで試して気づいた点が、CPU温度が結構低いことである。このCPUなら全コア4.6GHzいけそうなので、次はコア電圧を上げて倍率46を試してみる。
最初はコア電圧を1.300Vにしてみたが、5回ほどベンチ回したところでエラーが出てしまった。安定して通ったのはコア電圧1.325Vであった。CPU温度は70℃台前半に収まっているので、サーマルスロットリングが発生することは無いだろう。メモリ速度を2133MHzに落とせばOC耐性が上がってもっと回るかも知れないが、これは実用的な設定ではないのでやらない。
こちらは、スコアのランキング。ハズレ石でもコア電圧1.350V辺りにすれば4.3GHzで回るようなので、コスパを考えたらすごいCPUである。
次に、コア倍率45にしたときのコア電圧の下限を探ってみる。
コア電圧1.1625Vでベンチ中にエラーが発生。1.175Vまでならエラーが出る気配はないし、何度実行しても安定している。かなりの当たり石っぽい!?
コア電圧(V) | CPU温度(℃) | 消費電力(W) |
1.325 | 72.4 | 81.6 |
1.250 | 68.5 | 71.9 |
1.200 | 62.0 | 64.6 |
1.175 | 58.5 | 60.8 |
結果を表にまとめてみた。全コア4.5GHzで常用するなら、コア電圧は1.200Vが良さそう。コア倍率47も試したいと思うのだが、コア電圧1.500V辺りまで上げないと厳しい気がする。そもそもバックアップ用で買ったCPUなので壊れても困るし、限界OCはまたの機会ということで。