X570 UNIFYに引き続き、「MSI MEG X570 ACE」のチップセットのサーマルパッドもグリスにしてみた。
※マザーボード本体の分解や改造はメーカーの保証対象外になる恐れがあるので自己責任で行うこと。
使用したグリス
親和産業 シミオシ OC Master SMZ-01R
プロオーバークロッカー清水貴裕氏とのコラボレーションモデル。通称「ネコグリス」。柔らかくて伸びが良い気がする。非導電性。熱伝導率は13.2W/m・k とハイスペック。
もうひとつ定番で「ThermalGrizzly Kryonaut」(通称 クマグリス)があるのだが、ネコグリスと比べても性能の差はごく僅かなので今回はネコグリスのみで検証する。
チップセットヒートシンクの分解
今回の検証で使用するマザーボードは「MSI MEG X570 ACE」。チップセットファンが1段目のPCIeスロットと被らない位置にある。大きいビデオカードでも安心。
マザーボード本体。クーラーを取り外すのが面倒なので、そのまま作業する。取り外すのは左側のバックパネルとLED内蔵の「ACE」とロゴの入っているカバー。ぱっと見て分解方法が理解できないような人はやらない方が良いと思う。壊す可能性が高い。
チップセットクーラーにはファン用のケーブルがマザーボードに接続されている。配線が細いので断線させないよう注意しよう。
バックパネル、カバー、M.2ヒートシンクを取り外した状態。
チップセットヒートシンクは、ヒートパイプでVRMヒートシンクと連結されている。これらはプラスねじ8本で固定されているだけなので、取り外すのは容易。
チップセットヒートシンクのサーマルパッド。おそらくThermal Grizzlyの高性能なものだと思われる。感触や質感が全く同じなのだ。厚みはこちらで測定した限りでは1.5mm。先に言うのもあれなのだが、このサーマルパッドを一般的なスペックのサーマルパッドに交換すると、温度が10℃ほど上昇してしまう。純正のサーマルパッドはThermal Grizzly製(もしくは同等の性能)のもので間違いないだろう。非常に熱伝導率の高い優秀なサーマルパッドである。
チップセットヒートシンクを取り外した状態。
こちらがX570チップセット。グリスを塗る前に掃除して綺麗にしておく。
「MSI MEG X570 UNIFY」の場合ではグリスを塗ってヒートシンクをそのまま取り付けても問題なかったが、MEG X570 ACEではヒートシンクとチップセットに1.0mmほどの隙間ができる。この隙間をグリスのみで埋めるのは非常に効率が悪いというか無理があるので、写真のような15×15×1.2mm(長さ×幅×厚み)の純銅の板を用意した。ヒートシンクとチップセットの間に一枚挟まる構造になり、両側にグリスを塗る。ダブルグリスバーガーになってしまうが、サーマルパッドより熱伝導率は良いだろう。
ヒートシンク側にグリスを塗って、純銅の板を取り付ける。ずれるのを防ぐために、粘着性のあるサーマルパッドを四方に貼る。このサーマルパッドは3M製の厚み1.5mmのもの。チップセットにグリスを塗ってからヒートシンクを取り付ける。組み立ては分解の逆の手順で行う。
尚、別のマザーボードで同様の作業をする場合、ヒートシンクがチップセットとしっかり密着しているかどうかを確認した方が良い。
検証方法
チップセットが比較的高温になるのは、GPUが高負荷状態の時である。なので「FF14 漆黒のヴィランズ」ベンチマーク使用して検証する。ベンチマークの設定は一番重い4K解像度、最高品質の設定で、20分ほどループさせる。このときの最高温度と、アイドリング状態の温度を比較してみる。アイドリングはPCを起動して無負荷で1時間程放置した状態。ケースファンはDefine R6標準で付属しているものを使用し、回転数は600回転で固定。チップセット温度の確認は「HWiNFO」を使用する。室温は24℃。
ビデオカードは「MSI GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIO」を使用する。
パソコン構成
CPU | AMD Ryzen 9 3700X |
メモリ | G.Skill TridentZ Neo F4-3600C16D-32GTZNC |
マザーボード | MSI MEG X570 ACE |
電源ユニット | Seasonic SSR-750PX |
ビデオカード | MSI GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIO |
PCケース | Fractal Design Define R6 |
検証結果
純正サーマルパッドの状態と比較してグリスに塗り替えた状態では、アイドリングと高負荷時共に5℃下がる結果となった。MEG X570 UNIFYで検証した時よりも温度が下がらなかったのは、ヒートシンクとチップセットの間に銅板が挟んであるからだろう。しかしながら、純正サーマルパッドと比較すれば十分なパフォーマンスアップである。
MEG X570 ACEのチップセットファンはセミファンレス仕様となっており、現時点での最新BIOS(ベータ除く)では約55℃以下で動作が停止するようになっている。このマザーボードはUEFIでチップセットファンのコントロールが通常のファンと同様に可能である。
MEG X570 ACEの場合、チップセットが65℃程度だとファンのノイズは極めて小さく、ケースファンやCPUファンが動作していれば全く気にならない。このマザーボードの冷却性能は元から優秀なので、パソコンを普通に使用する人であればグリスに塗り替えるのは無意味である。前回の検証でも述べたが、チップセット温度が高いマザーボードでも、メーカーは耐久性等問題が出ないように設計しているはずなので、余程気にならない限りは純正のままで使用した方が良い。
最後に、環境によっては検証通りの温度にならない場合もあると思うので、今回の検証は真に受けないようにお願いしたい。
↓MEG X570 UNIFYで検証した記事↓