MSIのX570マザーボードはどのモデルもチップセットの冷却は優秀なのだが、更に効率良く冷やすために純正で付いているサーマルパッドをグリスに変更してみた。
※マザーボード本体の分解や改造はメーカーの保証対象外になる恐れがあるので自己責任で行うこと。
使用したグリス
1,Thermal Grizzly Kryonaut
高性能グリス筆頭である通称「クマグリス」は、オーバークロッカーのみならず、一般のジサカーにも愛用されているCPUグリス。柔らかくて伸びが良く、非導電性。熱伝導率は12.5W/m・k と文句無しのスペック。
2,親和産業 シミオシ OC Master SMZ-01R
プロオーバークロッカー清水貴裕氏とのコラボレーションモデル。通称「ネコグリス」。クマグリスよりも柔らかくて伸びが良い気がする。こちらも非導電性。熱伝導率は13.2W/m・k とハイスペック。
3,ワイドワーク 超柔らか高放熱ギャップ・フィラー 高放熱シート WW-GAP-B05
グリスではないが、手元に高性能な(?)サーマルパッドがあったので、純正と比較してみる。
グリスを塗る
今回の検証で使用するマザーボードは「MSI MEG X570 UNIFY」。チップセットファンが1段目のPCIeスロットと被らない位置にある。大きいビデオカードでも安心。
ファンのコネクタと、ネジ4本外してチップセットのヒートシンクを取り外す。ヒートシンク裏側に付いている純正サーマルパッドを剥がすのを忘れずに。
グリスを塗る。導電性の無いグリスなら適当でおっけい。このマザーボードに付いているサーマルパッドは厚みが0.5mmと薄かったので、剥がしてそのままグリスを塗った。メーカーによってはサーマルパッドの厚みが異なる可能性があるので、ヒートシンクと基板に実装されているコンポーネントのクリアランスを確認した方が良いと思う。
ヒートシンクを元に戻したら完成。
検証方法
チップセットが比較的高温になるのは、GPUが高負荷状態の時である。なので「FF14 漆黒のヴィランズ」ベンチマーク使用して検証する。ベンチマークの設定は一番重い4K解像度、最高品質の設定で、20分ほどループさせる。このときの最高温度と、アイドリング状態の温度を比較してみる。アイドリングはPCを起動して無負荷で1時間程放置した状態。ケースファンはDefine R6標準で付属しているものを使用し、回転数は600回転で固定。チップセット温度の確認は「HWiNFO」を使用する。室温は22℃。
ビデオカードは「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2070 SUPER Twin Fan」と「MSI GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIO」のふたつを使用し比較してみる。
パソコン構成
CPU | AMD Ryzen 9 3700X |
メモリ | G.Skill TridentZ Neo F4-3600C16D-32GTZNC |
マザーボード | MSI MEG X570 UNIFY |
電源ユニット | Seasonic SSR-750PX |
ビデオカード | ZOTAC GAMING GeForce RTX 2070 SUPER Twin Fan /
MSI GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIO |
PCケース | Fractal Design Define R6 |
検証結果
TDP 215WのRTX 2070 SUPERで検証した結果はこのグラフ。
※WW-GAP-B05はワイドワークのサーマルパッド
次に、TDP 300WのRTX 2080 Ti GAMING X TRIOで検証した結果はこのグラフ。
グリスを塗った環境では、どちらのビデオカードでも純正サーマルパッドと比較して10℃以上も下がる結果となった。使用している「ネコグリス」と「クマグリス」の性能は近いので、温度の差はほぼ無い。純正と比較すると凄まじいパフォーマンスアップである。これに対し、サーマルパッドを高性能なものに取り替えた場合では誤差程度の違いである。下手にサーマルパッドを別のものに取り替えるくらいなら純正のままで良いだろう。
ちなみに、グリスの状態でチップセットヒートシンク付近に80mmサイズくらいのファンで直接風を当てると、高負荷時でも30℃台まで下がる。グリスの熱伝導性能がサーマルパッドに比べていかに優れているのかが良く分かる検証となった。まぁサーマルパッドは厚みがあるし、グリスと比較するのは酷だと思うが。
MEG X570 UNIFYのチップセットファンはセミファンレス仕様となっており、現時点での最新BIOSでは約55℃以下で動作が停止するようになっている。つまり、グリスにしたことにより高負荷時でもチップセットのファンは止まったままだということである。
尚、このマザーボードはUEFIでチップセットファンのコントロールが通常のファンと同様に可能である。
MEG X570 UNIFYの場合、チップセットが65℃程度だとファンのノイズは極めて小さく、ケースファンやCPUファンが動作していれば全く気にならない。このマザーボードの冷却性能は元から優秀なので、パソコンを普通に使用する人であればグリスに塗り替えるのは無意味である。完全に自己満足と言えよう。チップセット温度が高いマザーボードでも、メーカーは耐久性等問題が出ないように設計しているはずなので、余程気にならない限りは純正のままで使用した方が良い。
最後に、環境によっては検証通りの温度にならない場合もあると思うので、今回の検証は真に受けないようにお願いしたい。
↓MEG X570 ACEで検証した記事↓
再検証
この記事を書いたのは寒い時期だったので、「MSI GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIO」を使用した環境で再度検証を行ってみた。
(2020/5)と表示してあるのが再検証したデータである。今回行った検証では室温が25℃位。アイドリングの温度が10℃程高くなっているが、高負荷時の上がり方はゆるくなっている。純正サーマルパッドに近いWW-GAP-B05でも殆ど変化はないので、高負荷状態での室温の影響は低いと言って良いだろう。