「MSI GeForce RTX 3080 GAMING X TRIO 10G」ビデオカードを水冷にしてみた!

EKWBから「MSI GeForce RTX 3080 GAMING X TRIO 10G」対応の水冷ブロックが発売されたので念願だった水冷にしてみた。

購入したもの

RTX 3080 GAMING X TRIO対応水冷ブロックは「EK-Quantum Vector Trio RTX 3080/3090 D-RGB」で、「Nickel + Plexi」と「Nickel + Acetal」の2種類がラインナップされている。「Nickel + Plexi」は、透明アクリルカバーとニッケルメッキされた銅製ブロックを組み合わせたもの。「Nickel + Acetal」は、ブラックのアセタール樹脂カバーとニッケルメッキされた銅製ブロックを組み合わせたもの。アクリルは見た目が映えるし人気が高いのだが、アセタール樹脂と比べると耐久性で劣る。ネジを強く締め付けたり、ホースの取り付けで無理に力をかけると、ネジ山付近にヒビが入ることもある。特に、アクリルはエタノールに非常に弱いので、ウェットティッシュ等のエタノールを含んだものでの掃除は厳禁である。

管理人が好むのはアセタール樹脂の方なのだが、日本のショップで取り扱っていることが稀である。取り寄せても需要がないのだろう。そこまで拘りはないので、今回は在庫のあったアクリルタイプを購入した。

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上記の水冷ブロックを取り付ける場合、純正のバックプレートは取り付け不可能なので、必要なら別売りのものを用意する必要がある。「EK-Quantum Vector Trio RTX 3080/3090 Backplate」はアルミ削り出し製となっており、ニッケルメッキとブラックアルマイトの2種類がある。管理人はブラックアルマイトを購入した。写真だと艶消しに見えるが、実物は結構光沢がある。

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水冷ブロック取り付け

※ビデオカードの分解はメーカーや代理店の保証対象外の行為になる可能性があるので自己責任で行うこと。

内容物は以下。

– EK-Quantum Vector Trio RTX 3080/3090 D-RGB series high-performance water block
– Mounting mechanism with screw-in brass standoffs
– Necessary mounting screws, nuts, and washers
– 2x Nickel plated brass plug G1/4”
– EK-Loop Multi Allen Key (6mm, 8mm, 9mm)
– Thermal pads
– Thermal grease EK-TIM Ectotherm (1g)

ネジ類がひとつの袋にまとめて入っている。付属のサーマルパッドはとても柔らかく高品質であり、量が多めに入っているので多少失敗しても大丈夫。ユーザーマニュアルは付属しないので、EKWBのサイトからダウンロードする必要がある。

水冷ブロック本体の大きさは、320x157x20.5mm(長さx幅x高さ)とかなり大きい。アクリルの塊と銅製ブロックを組み合わせた水冷ブロックは重量があり、ビデオカード純正クーラーよりも重い。「Vector Trio」と「GEFORCE RTX」ロゴのあるカバー内にD-RGB(アドレッサブルRGB LED)が内蔵されているので、配線をマザーボードに接続すれば光るようになる。尚、このカバーはふたつ共取り外して使用することが可能。

水冷ブロックを取り付けるので、「MSI GeForce RTX 3080 GAMING X TRIO 10G」を分解する。

ビデオカードの分解は、メーカーや代理店の保証対象外の行為なので保証がなくなることを理解した上で行う。

分解した状態。分解手順に関してはマニュアルに記載されている。

GPUのグリスは綺麗に拭き取っておく。ティッシュだと繊維が付くので「キムワイプ」がおすすめ。細かいところは綿棒で丁寧に掃除する。尚、GPUコアは無理に力をかけると割れるので、慎重に扱うこと。

付属のサーマルパッドをマニュアルに記載されている箇所に貼り付ける。サーマルパッドは片側が粘着性になっているので固定するのは容易。マニュアルだとビデオカード側に貼り付ける様になっているが、管理人は外したときにカード側に跡が残るのが好きではないので、粘着面を水冷ブロック側に取り付けた。いつもこの方法で組み立てているが、特に問題はない。拘りが無ければ説明書通りに貼り付けをした方が良い。

GPUコアにグリスを塗布したら、水冷ブロックとビデオカードを組み合わせる。ある程度手で抑えて馴染んだら、全部のネジを少しずつ均等に締め込んでいく。何か感触が変であれば一度取り外して確認した方が良い。先程も述べたが、GPUコアは無理に力をかけると割れるので、ネジを締め込むときは慎重に行うこと。

ネジは付属の樹脂ワッシャーを必ず組み合わせる。これはビデオカード側に傷や損傷が入るのを防ぐ役割がある。

D-RGBの配線が噛んでいないかしっかりと確認する。純正クーラーで接続されていたファンの端子は何も接続しない、当たり前だが。

別売りのバックプレートを取り付けないのであれば、作業は終了。RTX 3080 GAMING X TRIOはこのままでも特に問題ないが、RTX 3090 GAMING X TRIOの方は別売りのバックプレートの使用が推奨されている。

冷却水の流れる方向であるが、GPUコアに近い方をインレットと考えている人が多いが、実際は逆に接続している人をよく見る。EKWBは方向を指定していないので、どちらに接続しても問題はない。管理人はこの画像で言うとアウト側をインレットに接続することが多い。

バックプレート取り付け

内容物は以下。

– EK-Quantum Vector Trio RTX 3080/3090 Backplate – Black
– Mounting mechanism
– Thermal pads

取り付けに関しては特に難しいところはない。マニュアルに記載されている箇所にサーマルパッドを貼り付けて、ネジで止めるだけである。水冷ブロックに付属しているネジは短いので、バックプレート付属の長い方に置き換える形になる。ネジの種類はメッキと艶消しブラックの2種類がある。管理人はメッキの方を使用してみた。

マニュアルに記載されていないが、ブラケット部分のネジが一箇所バックプレートと干渉するので、ネジは取り外して、ブラケットはバックプレートと基板の間に挟んで固定するものと思われる。ネジが付いたままだとバックプレートが2mm程浮き上がるので、ネジを外さないとバックプレートを固定するのは無理である。尚、付属ネジ全て試したがネジの頭のサイズは全部同じなので、やはりネジは取り外して使用するようだ。

ブラケットはバックプレート側の丸い溝にハマるので動くことはないし強度的に問題はないと思われるが、バックプレートは力をかければたわむので、重量級ビデオカードで直接基板を固定しないのは不安が残る。管理人はバックプレート側をボール盤で加工し、ネジを上手く回避するように手直しをした。穴の直径をネジの頭が収まる様に少し広げ、1mm程深さを増せば、ブラケットのネジを取り付けたままでも綺麗に収まる。溝は残したままなので、組み立ててしまえば加工した箇所は見えなくなる。強度に関しては言うに及ばないだろう。同じように作業するのであれば、穴が貫通しなように注意。バックプレートの厚みは2mm程である。純正バックプレートはブラケットを回避する逃げがあるのに、なんでこんな作りにしたのか、甚だ疑問である。

ちなみに、ビデオカード基板にはRGB LEDが付いているのだが、バックプレートの作りがLEDを隠すようになっている。なので、バックプレートを取り付けるとこの部分のLEDは見えなくなる。上位モデルのSUPRIMにはこの部分にLEDは無いが、そもそもこれはTrio用のバックプレートである。なんでこんな作りにしたのか、甚だ疑問である、マジで。

パソコンに取り付け

 

でかい!重い!格好良い!ビデオカードを支えるサポートブラケットが無いと見事にたわむので、持っていない人は事前に用意しておいた方が良いと思う。ビデオカードは垂直配置でも良いのだが、拡張性が皆無になるのでそれは頂けない。このケースのサイドパネルはガラスではないし、映えを重視しても中身は見えないのだ。見栄え重視なら迷わず垂直配置にしていると思う。

肝心の光った状態であるが、D-RGBを搭載しているのでアドレス指定でちゃんと光る。

マニュアルには必ず24時間のリークテストを行うように書いてあるが、管理人の経験上、ポンプを回して最初に漏れが無ければまず問題ない。組み立てやパーツに問題があれば、ポンプを回せば直ぐに漏れが出てくる。これは経験談なので、心配であればちゃんと漏れがないか確認した方が良いだろう。稀なケースだが、数日かけてじわじわと漏れが出る場合もある。

また、経路内の圧力が高くなるとパーツの負担が高まり、これが漏れの原因となる場合もある。リザーバー等にエキゾーストバルブ(圧力排気弁)を取り付けて、簡単に圧力を逃がせるようにしておくと楽ちんなのでおすすめ。↓画像のリザーバー上部に付いている黒いものがエキゾーストバルブ。

BYKSKI G1/4 Manual Exhaust Valve Black

検証

ビデオカードの水冷化でどれ程効果があるのかを検証してみる。水冷と言っても、冷却性能はラジエーター容量やファンの性能等、環境で結構変わるので参考程度にして欲しい。

ラジエーターは「Black Ice Nemesis LS 360」をフロントとトップに配置、「Black Ice Nemesis LS 120」をボトムに配置している。ポンプの回転数は2400rpm(PWM25%)で固定。ファンは120mmサイズ最強の「Noctua NF-A12x25 PWM」を合計7個ラジエーターに取り付けている。回転数は900rpm(PWM35%)で固定。室温は約22℃。

検証は定番のベンチマーク「FF14 漆黒のヴィランズ」を使用する。解像度はWQHD、品質は最高品質の設定で行う。

パソコン構成
CPU AMD Ryzen 9 3950X
メモリ G.Skill TridentZ Neo F4-3600C16D-32GTZNC
マザーボード MSI MEG X570 ACE
ビデオカード MSI GeForce RTX 3080 GAMING X TRIO 10G
電源ユニット Seasonic PRIME Titanium 850W
PCケース Fractal Design Define 7

検証したデータをグラフにしてみた。

こちらはGPU温度のグラフ。空冷では72℃辺りまで上昇していたが、水冷にしたことで50℃前後に収まるようになった。ベンチマークをしばらくループさせて様子を見ていたが、55℃を超えることはなかった。負荷の低いシーンでは50℃以下なので、GPUの水冷化は効果が大きいことが分かる。しかし、実際にゲーム等をしていて性能の違いをが体感できるかは別である。RTX 3080 GAMING X TRIOは、空冷のままでも静音性に優れるビデオカードだし、サーマルスロットリングもまず発生しないので、拘りが無いのであれば水冷にする意味はあまり無いと思われる。

こちらはGPUクロックのグラフ。冷却に余裕があるとGPUクロックは非常に安定するようになる。負荷の高いゲームでフレームレートが瞬間的に落ち込むシーンとか、そういったところに効果があると思う。こちらも体感できるのかは微妙なところだが。

まとめ

パソコンを水冷化すれば、ラジエーターの容量次第で静音性に優れる環境を構築することが可能である。これが水冷の一番のメリットだろう。特に、ビデオカードに関しては静音性が高いと言われているモデルでも、高負荷状態でのファンノイズは普通に聞こえるものが殆どである。最近は、高フレームレート+フルHD環境や4K解像度でゲームをする人も増えてきたし、GPUにかかる負荷は高い傾向にある。負荷が高いとGPU温度は上昇しやすくなり、一定のラインを超えるとサーマルスロットリングが発生し処理性能が下がってしまう。水冷化することで大幅に冷却性能を引き上げることが可能なので、性能に拘る人にはパソコンの水冷化は大変おすすめできる。

しかし、本格的な水冷パソコンを組もうとする場合、パーツの選定や組み立てにそれなりのスキルを必要とする。組み立てに関しては経験が物を言うので、知識だけで上手く仕上げることは困難である。こればかりは経験を積んで慣れるしかない。特に、コストに関してはもう一台高性能なパソコンが組める程度にかかってしまうことも良くある。コスパ重視の人は見向きもしない水冷だが、コストをかけた分得られるものも多い。

最近は水冷パーツの品質が高く、メーカー品であれば水漏れ等のトラブルが起こることは稀である。ちゃんと勉強すればそんなに難しくはないので、興味のある人は一度水冷パソコンを組んでみては如何だろうか。

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